業種別

介護業の外国人採用

介護分野は外国人材の受入れルートが4つある数少ない分野です。特定技能、在留資格「介護」、EPA、技能実習のそれぞれの違いと、介護業固有の日本語要件、介護福祉士取得ルートを整理します。

Overview

この業種の概況

4つの受入れルートがある背景

介護業は全産業のなかでも有効求人倍率が際立って高い業種です。厚生労働省の推計では、2040年度に約272万人の介護職員が必要とされる一方、供給は約215万人にとどまり、約57万人の不足が見込まれています。

こうした背景から、介護分野は外国人材の受入れルートが4つ整備されている数少ない分野です。EPA(経済連携協定)による受入れが2008年に始まり、在留資格「介護」の創設(2017年)、技能実習への介護職種の追加(2017年)、特定技能の対象分野への追加(2019年)と、段階的に制度が拡充されてきました。

2024年3月の閣議決定では、介護分野の特定技能受入れ見込数が5年間で13万5,000人に設定されました。これは全16分野のなかで最大規模です。さらに2025年4月には、条件付きで訪問介護への従事も解禁され、外国人介護人材の活躍の場は施設系サービスから在宅介護にまで広がっています。

Systems

使える制度の比較

介護分野で検討される4つの制度

項目 特定技能1号 在留資格「介護」 EPA候補者 技能実習
対象業務 身体介護+付随業務 介護または介護の指導 介護施設での介護業務 介護施設での介護業務
在留期間 通算5年が上限 更新上限なし 候補者として最長4年 最長5年
日本語要件 N4以上+介護日本語 介護福祉士合格水準 来日前研修あり 入国時N4・2年目N3
家族帯同 不可 不可(合格後は可) 不可
訪問介護 条件付きで可 合格後は可 条件付きで可
介護福祉士 取得で「介護」へ移行可 資格保有が前提 合格が目標 実務経験ルートで受験可

即戦力として現場に配置するなら特定技能が主軸です。長期的に定着する人材を確保したい場合は、介護福祉士の取得を見据えたルート(留学から養成施設、またはEPA)も検討に値します。

Japanese

日本語要件と介護日本語

介護分野だけに追加される試験がある

介護分野は特定技能16分野のなかで唯一、分野固有の日本語試験(介護日本語評価試験)が課される分野です。利用者とのコミュニケーションが業務の中核であるため、一般的な日本語能力に加えて介護現場で必要な語彙や表現の理解が求められます。

特定技能(介護)の日本語要件

国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)またはJLPT N4以上の合格が必要です。

これに加えて、介護日本語評価試験の合格も求められます。身体介護で使う声かけ(「起き上がりますよ」「手すりを持ってください」等)や、介護記録の読み書きに関する出題が含まれます。

技能実習(介護)の日本語要件

入国時にJLPT N4相当が条件です。2号移行時(2年目)にはN3相当が求められます。この2年目のN3要件は介護分野固有のもので、他の技能実習職種にはありません。

在留資格「介護」の日本語水準

介護福祉士国家試験に合格できる水準が実質的に必要です。試験は日本語で実施されるため、N2以上の日本語力が目安になります。

令和8年度から介護技能評価試験と介護日本語評価試験の内容が改訂2版テキストに準拠する形に変わります。受験者は新テキストでの学習が必要です。

Qualification

介護福祉士と在留資格「介護」

長期定着のカギになる国家資格

介護福祉士は介護分野の国家資格です。この資格を取得すると在留資格「介護」に移行でき、在留期間の更新上限がなくなり、家族帯同も可能になります。外国人介護人材の長期定着において最も重要な資格です。

取得ルート

養成施設ルート

留学生として来日し、介護福祉士養成施設(専門学校等、2年以上)を卒業して介護福祉士に登録します。卒業と同時に資格を取得できるルートです。

実務経験ルート

特定技能や技能実習で介護業務に3年以上従事し、実務者研修を修了したうえで国家試験に合格する方法です。

2020年4月以降、取得ルートを問わず在留資格「介護」が認められるようになりました。特定技能で働きながら介護福祉士を目指す外国人にとって、現実的なルートです。

EPAルート

EPA介護福祉士候補者として最長4年在留し、その間に国家試験の合格を目指します。合格すれば在留資格「特定活動」(EPA介護福祉士)として更新上限なしで就労を継続できます。在留資格「介護」への変更も可能です。対象国はインドネシア、フィリピン、ベトナムの3か国です。

パート合格による在留期間延長

介護福祉士国家試験でパート合格(合格基準点の8割以上の得点かつ1パート以上合格)した特定技能1号の外国人は、通算在留期間5年の延長措置の対象になります。

合格パートは翌年の受験で免除されるため、段階的な合格を目指すことができます。

Home Care

訪問介護サービスへの従事

2025年4月に条件付きで解禁

2025年4月から、技能実習生と特定技能外国人が訪問介護等の訪問系サービスに従事できるようになりました。これまで外国人介護人材の就労先は施設系サービスに限られていましたが、在宅介護の深刻な人手不足を受けて解禁されたものです。

外国人側の要件

  • 介護職員初任者研修課程等を修了していること
  • 介護事業所等での実務経験が原則1年以上

受入事業所の義務

  • 訪問介護業務の基本事項に関する事前研修
  • 責任者等が同行する訓練の実施
  • キャリアアップ計画の作成
  • ハラスメント対策(相談窓口の設置等)
  • ICT活用を含む環境整備
  • 利用者・家族への事前説明

巡回訪問等実施機関(国際厚生事業団)への「訪問系サービスの要件に係る報告書」の提出も必要です。施行日は技能実習が2025年4月1日、特定技能が2025年4月21日です。

Transition

技能実習からの移行

試験免除の条件と手続きの流れ

介護職種の技能実習2号を良好に修了した者は、特定技能(介護)への移行時に日本語試験と技能試験の両方が免除されます。

試験免除の条件

介護職種の技能実習2号を良好に修了した者は、日本語試験・介護日本語評価試験・介護技能評価試験のすべてが免除されます。

介護以外の職種で技能実習2号を修了した者は、日本語試験(JFT-BasicまたはJLPT N4)は免除されますが、介護技能評価試験と介護日本語評価試験の合格が必要です。

移行手続きの流れ

1

介護分野特定技能協議会の構成員になる

厚生労働省が組織する協議会への加入が必要(無料)

2

在留資格変更許可申請(出入国在留管理庁)

特定技能の共通要件に沿って申請

介護分野は建設分野と異なり、受入計画の大臣認定やJACのような業界団体への加入は求められません。手続きは特定技能の共通要件に沿って進めます。

Future

育成就労への備え

2027年施行予定の新制度

育成就労は技能実習制度に代わる新しい在留資格で、2027年に施行される予定です。介護分野も対象分野に含まれる見込みです。3年間の育成期間を経て特定技能1号水準の人材を育成し、人材の確保と育成を両立する制度です。

介護分野にとって大きな変更点は、転籍(本人意思による受入機関の変更)が制度上認められることです。介護業界はもともと離職率が課題であり、転籍が認められることで人材の流出リスクが高まります。

今から確認しておくべき点

  • 処遇改善(給与、キャリアパスの明示)による定着施策
  • 転籍の具体的な要件(就労期間の条件、同一分野内に限定されるか等)
  • 監理支援機関(技能実習の監理団体に代わる機関)の認定要件
  • 現在の技能実習生に適用される経過措置の内容

Cost

採用コストと外部パートナー

制度ごとにコスト構造が異なる

介護分野は建設分野のようなJAC年会費等の業界固有の上乗せコストはありませんが、制度ごとにコスト項目が異なります。

特定技能

登録支援機関 委託する場合、月額2~4万円/人程度が相場
人材紹介料 紹介会社を利用する場合に発生
渡航・住居 海外からの招聘の場合、渡航費と住居確保費用
協議会加入 無料(厚生労働省の介護分野特定技能協議会)

技能実習

監理団体 管理費として月額3~5万円/人程度
送出機関 海外の送出機関への費用
渡航費 来日時の渡航費

技能実習からの移行であれば渡航費や送出機関費用は不要です。EPA はJICWELS(国際厚生事業団)を通じた受入れとなり、紹介手数料と日本語研修費が発生します。

FAQ

よくある質問

介護技能評価試験、日本語試験(国際交流基金日本語基礎テスト又はJLPT N4以上)、介護日本語評価試験の3つです。介護分野は他の分野にはない介護日本語評価試験が追加で課されます。技能実習2号(介護)を良好に修了した者は3つすべて免除されます。
外国人本人が介護職員初任者研修等を修了し、介護事業所等での実務経験が原則1年以上あることが条件です。受入事業所には事前研修、同行訓練、キャリアアップ計画の作成、ハラスメント対策、利用者・家族への事前説明などの義務があります。2025年4月から施行されています。
はい。介護福祉士を取得して在留資格「介護」に変更すれば、在留期間の更新上限がなくなります。家族の帯同も可能です。2020年4月以降、養成施設卒業、実務経験ルート、EPAのいずれのルートで資格を取得した場合でも対象です。
介護職種の技能実習2号を良好に修了した者は、日本語試験と技能試験の両方が免除されます。介護以外の職種の修了者は、日本語試験は免除されますが、介護技能評価試験と介護日本語評価試験の合格が必要です。
はい。特定技能、技能実習、EPAいずれの制度でも、夜勤自体は禁止されていません。ただし、利用者の安全確保のため、夜勤時に一人で対応させることは避け、日本人職員との複数人体制で配置するのが一般的です。
介護分野には建設分野のような事業所単位の人数枠はありません。ただし、事業所全体としてサービスの質を維持できる体制であることが前提です。
原則として、滞在期間満了後に帰国することになります。ただし、一定の条件を満たす場合に1年間の滞在延長が認められることがあります。また、在留資格「特定技能1号」への移行も選択肢です。

自施設に合う制度と手続きを確認できます

介護分野の概要を把握したら、制度詳細に加えて採用チェックリストと支援義務のページで実務を確認できます。